早期退職制度について考える ③

「早期退職制度」は、会社のみならず労働者側にもメリットのある制度になります。ただし、一概に早期退職といっても、退職する年齢も異なれば、退職の目的や退職後のキャリアプランは人それぞれです。退職する会社から紹介を受けて再就職するケースもあれば、まったく別の会社に就職することも当然あります。また、今までのキャリアを活かして独立する人、仕事を完全にリタイアするライフプランを選択する人など本当に様々です。

➡今回は、早期退職制度を利用して、自身のキャリアアップやセカンドキャリアの形成を目指す「社員の立場」を想定して、本制度利用のメリットやデメリット、応募の際の注意点、早期退職制度の導入事例などについてご紹介していきたいと思います。

早期退職制度に応募するメリット

社員が早期退職制度に応募することによるメリットはいくつか考えられますが、代表的なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。それぞれ具体的に見ていきましょう。

退職金の割増

早期退職制度に応募した社員に対する「優遇措置」として最も代表的なものが「退職金の割増」になります。退職金がどの程度割り増しされるのかは会社によって違ってきますので、早期退職制度の規定退職金規定をよく確認し、定年まで働いた場合の見込み給与と、退職金の割増額を照らし合わせ、どちらを選択したほうがメリットが大きいかを検討する必要があります。

早期退職制度に応募した場合の退職金相場は?
➡退職金の増額の割合は会社によって違いますが、厚生労働省が公表した「平成30年就労条件総合調査」によると、退職理由ごとの退職金の平均額は以下の通りで、早期退職制度への応募による平均退職金額が最も高い結果となっています。
※参考リンク:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」4 退職給付(一時金・年金)の支給実態

■退職理由■ ■平均退職金額■
① 定年退職 1,983万円
② 会社都合退職 2,156万円
③ 自己都合退職 1,519万円
④ 早期退職制度による退職 2,326万円

この調査の結果では、退職時の年齢が45歳で、勤続年数20年以上の社員の場合、早期退職制度応募時の平均退職金額は2,326万円、自己都合での退職による平均退職金額は1,519万円となっており、早期退職制度による退職の方が約1.5倍も高くなっています

再就職支援

早期退職制度を社員に対する「福利厚生制度の1つ」として導入している会社の場合、早期退職者の再就職支援を積極的に行う会社が圧倒的に多くなっています。定年退職の場合、退職後の就職支援を会社が行うことはあまり多くありません。自身のキャリアアップやセカンドキャリアの形成を考えている方にとって、会社からの再就職支援を受けられることは、早期退職に応募した場合に大きなメリットになります。

(1)早期退職制度における再就職支援
・早期退職制度における「再就職支援」について、会社が直接に再就職支援を行うこともありますが、会社が、就職支援会社や人材紹介会社などと契約して、就職支援会社等が代わって早期退職者の再就職支援を行う場合もあります。再就職支援の主な内容として、早期退職者のカウンセリングや自己分析のサポート、求人紹介や面接指導、履歴書の添削などが行われます。

(2)再就職支援活用のススメ
・再就職支援を就職支援会社や人材紹介会社などに委託する場合、退職者1人あたり50万円~100万円のコストが発生すると言われます。早期退職制度へ応募するのであれば、再就職支援を積極的に活用すべきです。早期退職制度の対象となる方は、40代半ばから50代の中高年齢者が過半数を占めています。長年培った経験やスキルがあっても、やはりシニア層の再就職は難航することも多いため、この再就職支援は力強いサポートになるはずです。

■再就職支援の具体的なフロー■
➡早期退職者への再就職支援は以下のようなフローで行われます。

① 適正チェック ➡キャリアコンサルタント(※)とのキャリア相談の中で、まずは退職者自身の自己分析、適正のチェックが行われます。再就職活動をスムーズに進めるには、「自分がやりたい仕事」、「自分に向いている仕事」を明確にすることが大切です。この際、自分自身の「職歴やキャリアの振り返り」+「知識やスキルの棚卸」を徹底的に行います。
② 目標の設定 ➡自分自身の適正チェック後、再就職先を決定する上での目標を設定します。「どの業界・業種へ再就職するのか」、「再就職先として希望する具体的な会社はあるのか」等、かなり具体的に目標設定を行います。
③ 応募する再就職先の決定 ➡キャリアコンサルタントとのキャリア相談の中で、応募する再就職先を決定します。この際、応募する企業へ推薦状を送付することで、実際の面接まで繋げられるようにサポートしてくれる再就職支援会社もあります。
④ 面接対策・履歴書の添削 ➡再就職支援会社や人材紹介会社は、採用面接の様々なノウハウを持っていますので、ここではかなり具体的で実践的なアドバイスが行われます。
⑤ 再就職後のアフターフォロー ➡採用決定後の入社準備~再就職後の職場定着につながるようなサポートも行われるのが再就職支援の特徴です。再就職後のキャリアについてもしっかりとしたサポートが行われるため、安心して新しい仕事のスタートを切ることができます。

(※)キャリアコンサルタントとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行う専門家を言います。

特別休暇の付与

有給休暇のほかに、会社が独自に設定した「特別休暇」を付与することも優遇措置として考えられます。早期退職制度に応募する社員の中には、退職前から転職活動を行う方も多いため、時間的余裕をもって転職活動が行えるのは大きなメリットです。このような特別休暇の付与と同じ目的で、早期退職制度に応募する社員の勤務免除を行う会社もあります。勤務を免除する日数については会社によって異なりますが、早期退職の承認日から退職日までの全日数を勤務免除とする会社もあります。

早期退職制度に応募する社員の中には、退職日までに有給休暇をすべて使い切れないといった方もいます。もちろん退職日までに有給休暇を消化できるようスケジュールを立てることが大切ですが、早期退職制度に応募するシニア層の多くは、裁量や責任の大きい業務に就いている方が多く、また有給休暇の残日数も多いため、業務の引き継ぎなどの兼ね合いから、退職日までに有給休暇を消化することが難しいケースは珍しくありません。

➡そのようなケースでは、会社が有給休暇を買い上げることがあります。年次有給休暇は、社員の心身のリフレッシュを図ることを目的としているため、原則として買い取りはできませんが、退職時に残った有給休暇を買い取ることは可能です(ただし、会社に課せられた義務ではありません)。

早期退職制度に応募するデメリットと注意点

社員が早期退職を選択することによるデメリットはいくつか考えられますが、代表的なデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。それぞれ具体的に見ていきましょう。

再就職先がすぐに決まらない場合がある

早期退職の際、再就職支援制度を受けられる場合であっても、40代、50代の中高年齢層になると再就職先の選択肢がどうしても限られる場合があることは現実として受け止める必要があります。今まで積み重ねてきたキャリアがあるからといってすぐに再就職先が見つかるとは限りません。現実問題、企業はシニア層の採用に関して「予想以上に消極的」です。

マネジメント能力や今までの職歴やスキルを「可視化」してアピールできるような準備が必要になります

収入が減少する場合がある

早期退職後、再就職先が決まった場合でも、前職よりも収入が高くなるとは限りません。むしろ、中高年齢層の再就職の場合で、前職は大企業、再就職先が中小企業である場合などは、前職よりも収入が減少する可能性が高くなります。また、独立開業する場合でも、事業が軌道に乗るまで収入が減るだけではなく、経費などの出費がかさむ可能性があります。

■就業促進定着手当について■
再就職後の賃金が低下した場合、一定の条件を満たせば、雇用保険から就業促進定着手当の支給を受けられる場合があります。就業促進定着手当の支給対象者、支給額、申請手続きについては、以下のハローワーク リーフレットをご確認ください。
➡参考リンク:ハローワークインターネットサービス 就業促進定着手当について

年金額が減少する場合がある

早期退職を選択した場合、将来受けられる老齢の年金額が少なくなる可能性があります。日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金保険」の2階建てになっています。一般的に、老齢年金として受けとることができる年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つの年金になります。早期退職することでどのように影響するのか、それぞれ見ていきましょう。

(1)老齢基礎年金の場合
・老齢基礎年金の年金額は、20歳から60歳になるまでの保険料納付月数で決まります。早期退職後、再就職しない場合であっても、退職後60歳になるまで国民年金保険料を納付すれば、老齢基礎年金は減額されません。

早期退職後、国民年金の第1号被保険者となれば、国民年金の定額保険料(※)に付加保険料というオプションを上乗せして納めることで、将来受けられる年金額を増やすことができます。この付加保険料は会社員(第2号被保険者)は納付することができません。
(※)国民年金定額保険料:令和4年度 月額16,590円

付加保険料の月額は400円、付加年金額(年額)は「200円×付加保険料納付月数」で計算します。保険料額も、受け取れる付加年金額も少額ですが、付加年金を2年以上受け取ると、支払った付加保険料以上の年金が受け取れることになります。つまり、国民年金の第1号被保険者であれば、基本的に付加保険料を納付したほうがお得になります。

・例えば、45歳から60歳までの15年間付加保険料(月額400円)を納めた場合
200円×180月(15年)=36,000円(年額)が付加年金額として老齢基礎年金に上乗せされます。
➡つまり15年間納付してきた付加保険料の総額:72,000円(400円×180月)は、付加年金の支給を2年間受ければ回収できてしまいます!

・そして、老齢基礎年金額+付加年金額の合計は、
777,800円(※)+36,000円=814,000円(年額)
➡この金額が一生涯支給されることになります。
(※)777,800円:毎月の定額保険料(令和4年度:16,590円)を40年間納めた場合の老齢基礎年金額(令和4年度現在)

(2)老齢厚生年金の場合
・老齢厚生年金の年金額は、簡単に言えば、厚生年金保険の被保険者であった間のお給料(ボーナスも含みます)の平均額と、加入月数によって決定されます。ですので、10年早く退職すれば、厚生年金保険への加入月数が120月少なくなりますので、再就職しないとすると、当然に老齢厚生年金の額は減少します。

早期退職する方に扶養する配偶者があり、その配偶者が第3号被保険者である場合、早期退職される方が会社員で、厚生年金保険の被保険者であれば、配偶者は国民年金の保険料を納付する必要がありませんが、早期退職後に再就職しない場合、配偶者は第3号被保険者でなくなるため、配偶者の国民年金保険料を別に納付しなくてはならなくなります。早期退職による厚生年金保険への影響は、国民年金以上に大きいと言えます

また、厚生年金保険には「加給年金」という仕組みがあります。これは大まかにに言うと、一定の条件を満たした配偶者がいる場合、その配偶者を扶養するために、老齢厚生年金に加算が行われる仕組みです。一般的には、老齢厚生年金を受ける人が65歳になってから、その方の配偶者が65歳になるまで、一定の条件を満たせば約39万円が加給年金額として加算されます。

➡ただし、この加給年金を受けるには、「厚生年金保険の被保険者期間が240月以上あること」が1つの条件となっていますので、早期退職によって、厚生年金保険の被保険者期間が240月を下回ってしまうと、加給年金が受けられなくなる可能性があります。そのため、加給年金の支給対象となる可能性がある方は十分に注意が必要です。

失業保険の給付制限を受ける場合がある

早期退職制度への応募による退職は、一般的には「自己都合扱いによる退職」となりますので、失業手当(正式には基本手当)を受けることができるまでに時間を要します。これを離職理由による給付制限といいます。早期退職の場合、退職後、最初の受給手続き日から7日後の翌日から2ヵ月間は、失業手当が受けられない給付制限期間となります。

➡ただし、早期退職制度を利用した社員の取扱いについて、定年退職と同様の扱いとするなど、就業規則で別に定めている会社もあります。そのような場合には、失業手当の給付制限の規定は適用されず、待期期間である7日間を経過し、失業状態にあると認められれば、失業手当を受け取ることができます。

■雇用保険の特定受給資格者について■
・雇用保険の「特定受給資格者」とは、会社の倒産、給与の未払い、会社の法令違反、退職勧奨、一定時間以上の超過勤務などの理由に伴い離職した人を言います。この特定受給資格者は、失業手当の給付制限を受けないだけではなく、失業手当を受けられる日数(所定給付日数)についても、一般の受給資格者に比べて優遇されています。特定受給資格者として失業手当を受けられる日数は、会社を離職したときの年齢と、雇用保険の被保険者であった期間によって、次の表のとおり定められています。

一方、早期退職制度への応募による退職は、一般的に「自己都合扱いによる退職」となります。ですので、早期退職後すぐに再就職先が決まらず、失業手当の支給を受ける場合、失業手当を受けることができる日数は次の表のとおりになります。なお、前に説明した通り「自己都合扱いによる退職」の場合、離職理由による給付制限を受けることになります。

※一般の受給資格者が失業手当を受けられる日数(所定給付日数)は、離職時の年齢に関わらず、雇用保険の被保険者であった期間によって日数が定められています。

ここで、勤続年数(雇用保険の被保険者であった年数)25年、退職時の年齢が45歳の方が失業手当を受ける場合、特定受給資格者としての所定給付日数と、一般の受給資格者としての所定給付日数を比較すると以下のとおりになります。

  所定給付日数
特定受給資格者 330日
一般の受給資格者 150日

➡上記のケースでは、特定受給資格者の方が、一般の受給資格者と比べて、失業手当を受けることができる日数(所定給付日数)180日も多いことがわかります。所定給付日数分、必ず失業手当を受けられるというわけではなく、失業手当(基本手当)とは、あくまでハローワークから「就職の意思や能力があるにも関わらず失業状態にある」と判断されてはじめて支給されるものです。とはいえ、早期退職後、再就職先がすぐに決まらない場合など、失業手当の支給を受けることで心にゆとりをもって就職活動に専念できます。そういった意味でも、この180日の差は大きいと言えます

特定受給資格者とは、次のいずれかに該当する方を言います

(1)倒産等による離職者 ① 倒産等による離職者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者、及び当該事業主に雇用される雇用保険被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
(2)解雇等による離職者 ① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したため離職した者
③ 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予期し得なかった場合に限る)
離職の直前6か月間のうち、いずれか連続する3か月で45時間を超えて時間外労働及び休日労働が行われたため離職した者
離職の直前6か月間のうち、いずれか1か月で100時間以上、時間外労働及び休日労働が行われたため離職した者
離職の直前6か月間のうち、いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働及び休日労働時間を平均して1か月で80時間を超える時間外労働及び休日労働が行われたため離職した者
⑧ 事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑨ 事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者
⑩ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑪ 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑫ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者
⑭ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者
(※早期退職制度等に応募して離職した場合は、これに該当しません)
⑮ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
⑯ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

・早期退職制度への応募による退職は、会社の就業規則などで別に定めがない限り、一般的には「自己都合扱いによる退職」となります。ですので、退職後に発行される「離職票」に記載される離職理由も「自己都合退職」となり、失業手当について給付制限を受け、所定給付日数も一般の受給資格者と同じ日数になります。

ただし、早期退職制度への応募による退職であっても、上の表のいずれかの理由に該当すれば、「特定受給資格者」として取り扱われる場合もあります。特に早期退職の場合であっても、上の表の⑤、⑥、⑦に当てはまるようなケースも想定されます

退職時、会社は「離職証明書」を作成します。この離職証明書とは、ハローワークが「離職票」を発行するために、会社がハローワークに提出する書類で、この離職証明書には「離職理由」も記入されます。離職証明書は原則、ハローワークへ提出する前に退職者の確認・署名が必要になりますので、早期退職の場合であっても、上の表のいずれかに該当すると思われる場合は、退職者の確認・署名時にその旨を会社に申し出ることができます。

➡ただし実務上、この「離職証明書」は、退職者の確認・署名がない場合でも届出が受け付けられますので、退職後に届く「離職票」の離職理由が実際の離職理由と異なると思われる場合は、離職票の「具体的事情記載欄」の「離職者記載欄」にできる限り具体的な内容を記入し、その内容を客観的に証明する書類を持参して、ハローワークに申し出ることができます。

・離職の直前の6か月間のうち、一定時間以上の超過勤務があったことをハローワークに申し出る場合、超過勤務時間などを証明することのできる書類が必ず必要になります。給与明細が紙ではなく電子化配布されている場合などは、退職前に出力しておく必要があるかもしれません。またサービス残業などがあっても、その時間は超過勤務としてハローワークに認めてはもらうことはできません。

早期退職制度の導入事例

早期退職制度を導入している企業で、2021年~2022年の間にその募集実施が行われた代表的な事例として、株式会社東武百貨店サンデン株式会社の事例を簡単にご紹介します。

(1)株式会社東武百貨店の場合

① 募集期間 2021年7月17日~(退職日:2021年8月31日)
② 対象社員 2021年8月末時点で40~64歳の社員約750人を対象
③ 早期退職者の募集人数 200人
④ 優遇措置 退職金加算、希望者への再就職支援
⑤ 募集目的 2022年度以降の営業収支黒字化に向けて全館的なフロアMDの見直しや、EC事業の拡大、外商の強化といった事業構造改革に取り組む中で、要員の適正化のため。

東武百貨店の事例の場合、早期退職への応募条件として、年齢のみの設定となっており、勤務年数や職種、所属部署などは問わず、定年退職後に再雇用された社員も対象に含んでいたこと、また2021年2月期決算で62億円の最終赤字を計上していたことなどから、早期退職制度の実施にも関わらず、「大規模リストラ」と報道され、かなりネガティブなイメージで捉えられていた印象があります。実際の早期退職制度への応募者数や、退職金の加算額等、具体的な再就職支援については公開されていません。

(2)サンデン株式会社の場合

① 募集期間 非公開(早期退職募集実施の公表は2021年12月2日、退職日は2021年12月末)
② 対象社員 非公開
③ 早期対象者の募集人数 非公開(※実際の応募者数は196人)
④ 優遇措置 特別退職加算金の上乗せ、希望者への再就職支援
⑤ 募集目的 事業再生を確実に遂行し、持続的な成長のために事業の更なる効率化を目指すため。

サンデン株式会社の事例の場合、早期退職者への優遇措置として、2022年1月11日より、株式会社群馬銀行と株式会社リクルートキャリアコンサルティングの連携による再就職支援が行われました。実際の再就職支援の取り組みが一部公開されていますのでご紹介します。

a)群馬銀行本部の人材紹介業務担当を通じ、群馬銀行取引先企業の個別の求人ニーズを株式会社リクルートキャリアコンサルティングへ取り次ぎます。
b)株式会社リクルートキャリアコンサルティングが、群馬銀行取引先企業の個別の求人ニーズと、退職者の能力やキャリアとのマッチングを行い、退職者がその能力を発揮できる業種(主に製造業等)への再就職支援を行います。

早期退職制度への応募を検討するにあたって

早期退職への応募は人生の大きな決断です。勤続年数が長ければ長いほど、早期退職を決断する際に検討しなければならない点も多くなります。早期退職へ応募する上で最も大事なことは、「会社との対話」です。少しでも疑問に思うこと、不安に思うことがあれば、納得のいくまで会社と話し合うことが大切です。

➡一言で「早期退職制度」といっても、会社によってその制度の仕組みは様々です。また社員の方からしても、早期退職制度に応募する目的は様々、人それぞれ違います。ですので、早期退職にあたり注意する点は人それぞれ違ってきます。今回ご紹介したのは、あくまで一般的な極々一部の内容になりますが、早期退職へ応募するかどうかを検討する上で、少しでもご参考になれば幸いです。

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