固定残業代、2つの計算方法について

固定残業代とは、残業時間に関わらず、毎月決まった額を支給する残業代のことです。「固定残業手当」や「みなし残業代」とも呼ばれます。この固定残業代の計算には、「手当型」「基本給組入型」2つの方法があり、どちらの計算方法によるかは会社によって異なるため、まずは自社のルールを正確に把握する必要があります。今回のブログでは、固定残業代の概要、固定残業代の計算方法、制度の導入・運用の際の注意点について詳しく解説していきます。

固定残業代の概要と導入時の注意点

固定残業代とは、残業時間にかかわらず決まった額を毎月支給する残業代のことです。例えば、「みなし残業時間数は月15時間、固定残業代は3万円」と設定されている場合、1か月間の残業時間が15時間以内であれば、必ず毎月5万円が支給されることになります。ただし、1か月20時間残業した場合は、みなし残業時間数(15時間)を5時間超過しますので、この5時間分については、残業代が追加して支払われます。なお、この5時間分の残業代の計算に関し、基本給など通常の賃金と固定残業代が明確に区別されていれば、固定残業代を割増賃金の算定基礎から除外して計算を行います

給与の支給項目として、固定残業代を適切に導入・運用するためには、基本給など通常の賃金部分と固定残業代部分を明確に区別したうえで、固定残業代の金額や対象となる、みなし残業時間数などを就業規則や雇用契約書、労働条件通知書に記載し、また、みなし残業時間数を超えた場合には、超過分の残業代を追加で支払うことについても、あわせて明記しておく必要があります。

労働者は原則として、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて働くことができません。固定残業代を導入し、法定労働時間を超えて労働させる場合でも、36協定の締結と届出は必要になります。また、36協定を結んだ場合も、特別な事情がある場合を除き、月45時間、年間360時間という時間外労働の上限がありますので、事業所ごと36協定の範囲内で、実態に即したみなし残業時間数を設定する必要があります

固定残業代を導入する場合、地域別最低賃金を下回らないかどうか十分に確認する必要があります。地域別最低賃金は都道府県ごとに定められており、毎年見直されるため、常に最新の水準を把握しておく必要があります。1時間あたりの賃金を計算した結果、最低賃金を下回っていた場合、労働基準法や最低賃金法に違反することになり、罰則が課せられたり、未払い賃金を請求されるリスクもあるので注意が必要です。

月給制の場合、1時間あたりの賃金は以下の方法で計算します。

(※1)月平均所定労働時間=(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月
(※2)固定的手当には、労働基準法で除外が認められている手当(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる手当、1か月を超える期間ごとに支払われる手当)や、基本給など通常の賃金と明確に区別される固定残業代には含めず、1時間あたりの賃金を計算します。

固定残業代の2つの計算方法

固定残業代は、通常の残業代と同様、労働基準法で定められた計算方法に基づき算出されますが、その計算方法には、「手当型」「基本給組入型」2つの方法があり、固定残業代を導入する際、自社にとってどちらの計算方法が適しているか慎重に判断する必要があります。それぞれの具体的計算方法と特徴について詳しく見ていきましょう。

手当型の固定残業代

手当型の固定残業代は、通勤手当や資格手当などの諸手当と同様、固定残業代を手当の1つとして支給します。基本給とは別に、「固定残業手当」「定額残業手当」などの名称で、みなし残業時間分の残業代を手当として支給する方法です。基本給と固定残業代が明確に区分されているため、社員にとっても給与の内訳を把握しやすいメリットがあります。

➡ただし、手当型の固定残業代の場合、基本給と固定残業代を明確に区別して取り扱うため、基本給額を基礎として賞与やインセンティブ、退職金等を計算する会社では、基本給組入型の固定残業代と比較すると、賞与やインセンティブ、退職金等の支給額が少なくなってしまう場合もあり、社員の不満につながる可能性もあります。

手当型の固定残業代計算式は、以下のとおりです。

(※1)月平均所定労働時間=(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月
(※2)給与の総額には、労働基準法で除外が認められている手当(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる手当、1か月を超える期間ごとに支払われる手当)や、固定残業代は含めずに計算します。

➡手当型の固定残業代を、具体的な数字をあてはめて実際に計算してみましょう。

給与の総額 280,000円
月平均所定労働時間数 160時間
みなし残業時間数 10時間
基本給組入型の固定残業代

基本給組入型の固定残業代は、固定残業代を含めて時間給を算出したうえで、みなし残業時間分の残業代の計算をし、最後に給与総額から固定残業代を引いて基本給を調整する方法で計算されます。基本給組入型では、基本給に固定残業代を含めて支給するため、社員への雇用契約書や労働条件通知書には、固定残業代の計算方法や固定残業時間を明記する必要し、組み入れられている固定残業代とみなし残業時間を記載します。

➡ただし、基本給組入型の固定残業代は、手当型の固定残業代と比べて、固定残業代を支給されているという実感が得られにくく、社員のモチベーション低下につながりかねません。また、みなし残業時間数を超える残業が発生したときに、手当型より1時間当たりの残業代が下がってしまうため、手当型から基本給組入型へ切り替える場合などは十分な検討が必要になります。

基本給組入型の固定残業代計算式は、以下のとおりです。

(※1)月平均所定労働時間=(365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12か月
(※2)給与の総額は、固定的手当を含んで計算します。ただし、労働基準法で除外が認められている手当(家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる手当、1か月を超える期間ごとに支払われる手当)や、固定残業代は含めず総額を計算します。

➡基本給組入型の固定残業代を、具体的な数字をあてはめて実際に計算してみましょう。

給与の総額 300,000円
月平均所定労働時間数 160時間
みなし残業時間数 10時間

基本給組入型では、基本給に固定残業代を含めて支給することになるため、上記の具体例の場合、雇用契約書や労働条件通知書には、「基本給30万円(10時間のみなし残業時間分の固定残業代として21,739円を含む)と記載することになります。つまり、手当型の固定残業代のように、必ずしも基本給と固定残業代を分けて記載する必要はありません。

➡ただし、基本給組入型も、給与総額から固定残業代を差し引いた分が実質の基本給になりますので、上記具体例の場合、実務上は雇用契約書や労働条件通知書に次のように記載することが多く、給与明細の支給項目の設計上も基本給と固定残業代を分けて記載する場合が多いです。

基本賃金 300,000円
基本給 278,200円
固定残業代 21,800円(みなし残業時間数10時間分)(※)

(※)固定残業代の計算単位として、100円単位で丸めることが多いです。

手当型、基本給組入型、どちらの固定残業代を採用する場合でも、基本給と固定残業代の内訳、みなし残業時間数、固定残業代の計算方法を明確にし、社員がしっかりと把握できる形でそれらを就業規則や雇用契約書に明記することが求められます。また、固定残業代について、誤った運用をすると法令違反につながるおそれがあります。法令違反となる場合として、次のようなケースが想定されますので、固定残業代の制度の導入・運用に際して、必ずチェックする必要があります。

① 基本給と固定残業代の区分が明確でない。
② みなし残業時間数や、固定残業代の計算根拠が明示されていない。
③ みなし残業時間数を超えた時間外労働に対し、追加で残業代が支払われていない。
④ 固定残業代を除いた基本給部分について時給換算した際、地域別最低賃金を下回っている。
⑤ 36協定で定めた時間外労働の上限時間を超えてしまっている場合。

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