【第1回】解説・雇用関係助成金

・厚生労働省では、雇用機会の拡大や障害者雇用、従業員の能力開発、労働環境の改善等を行った事業主を支援するために雇用関係助成金を支給しております。働き方改革が進み、従業員の雇用環境を整える必要性を強く感じる企業が多い中、雇用関係助成金をうまく活用すれば、新たに従業員を雇い入れたり、雇用環境を整えたりするための費用を確保することができます。

・ただし、雇用関係助成金を受けるためには条件が定められており、支給申請のプロセスも非常に複雑で、必要書類も非常に細かいものが求められます。また雇用関係助成金の種類も多岐に渡り、『 どういった条件でどの助成金を申請すればよいのか分からない 』といったご相談を多くいただきます。第1回目の今回は、高年齢者や外国人の方々を雇用する際に積極的に活用できる助成金を中心に、その概要や受給のポイントなどを解説していきたいと思います。

雇用関係助成金の基本

・まずは雇用関係助成金を受給できる事業主の範囲や、雇用関係助成金全般の共通事項について解説します。

雇用関係助成金の特徴
(1)雇用関係助成金の財源は、事業主が負担している雇用保険料である
(2)雇用関係助成金は原則返済が不要である
(3)支給要件を満たせば受給することが可能である(要件主義)
(4)雇用関係助成金の種類が非常に多く、対象となる助成金を特定することが難しい
(5)支給申請のプロセスが非常に複雑であり、必要書類も非常に細かいものを求められる
対象となる事業主の範囲
(1)受給できる事業主
・右のすべての条件を満たしている事業主が雇用関係助成金の支給対象となる事業主になります
(a)雇用保険適用事業所の事業主であること
(b)支給の審査に協力する事(管轄労働局からの書類提出の要望や実地調査の要望があった場合の受け入れ等)
(c)申請期間内に申請を行うこと
(2)受給できない事業主
・右の項目のうち1つでも該当すると受給できません
(a)不正受給を受けてから5年を経過しない事業主
(b)支給決定の日までに不正受給をした事業主
(c)前年度より前の年度の労働保険料を納付していない事業主
(d)過去1年以内に労働関係諸法令違反があった事業主
(e)性風俗関連営業や接待を行う飲食店営業等を行っている事業主
(f)反社会的勢力と関わりのある事業主
中小事業主の範囲

雇用関係助成金は、中小事業主とその他の事業主とで、支給要件や支給額が異なります。多くの助成金では、中小事業主に対して、要件の緩和や支給額の上乗せが行われています。具体的な中小事業主の範囲は、以下のとおりです。

業種の分類 中小企業基本法の定義
小売業 資本金の額または出資の総額 5,000万円以下
常時使用する従業員の数 50人以下
サービス業 資本金の額または出資の総額 5,000万円以下
常時使用する従業員の数 100人以下
卸売業 資本金の額または出資の総額 1億円以下
常時使用する従業員の数 100人以下
製造業その他の業種 資本金の額または出資の総額 3億円以下
常時使用する従業員の数 300人以下
生産性要件について

・企業における生産性向上の取組みを支援するため、助成金を申請する事業所において、生産性の伸び率が生産性要件を満たしている場合、一部の雇用関係助成金について、その助成額や助成率の割増が行われます。生産性要件とは、助成金の支給申請等を行う直近の会計年度における生産性が、申請年度の3年前と比較して6%以上伸びていることとなります。生産性要件は次の計算式によって求められます。

【生産性要件】=生産性(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷雇用保険被保険者数
※生産性要件の計算式の分母は、雇用保険被保険者数になります。仮に1人あたりの人件費が変わらないとすると、他の要素(営業利益、減価償却費、動産・不動産賃借料、租税公課)が伸びているか否かがポイントになります。直近の会計年度において、設備投資を行った場合や、営業利益が伸びている場合は生産性要件を満たしている可能性があります。

高年齢者のための助成金

特定求職者雇用開発助成金

・高年齢者、障害者の新規雇用では非常にポピュラーな助成金になります。高年齢者、母子家庭の母、障害を持つ方々は就職が困難なことが多く、こうした方々の雇用に積極的な事業主向けの助成金になります。
・まずはハローワークに対象者を明確にし、求人の申し込みを行うところから始まります。高年齢者雇用の場合には、雇用管理制度の見直しなどの必要性が生じる場合があります。

制度の概要

・平成29年度の改正により、特定求職者雇用開発助成金は整理統合が行われ、現在は以下の7つのコースになりました。主に就職の困難な方の就職に対する助成金になります。

1.特定就職困難者コース
2.生涯現役コース
3.被災者雇用開発コース
4.発達障害者/難治性疾患患者雇用開発コース
5.障害者初回雇用コース
6.就職氷河期世代安定雇用実現コース
7.生活保護受給者等雇用開発コース

※今回は代表的な1.特定就職困難者コースと2.生涯現役コースについて解説します。

1.特定就職困難者コース
・高年齢者(60歳以上65歳未満)、障害者、母子家庭の母など就職が特に困難な方を、 ハローワーク等(ハローワーク、地方運輸局、雇用関係給付金の取扱いについての同意書を労働局に提出している有料・無料職業紹介事業者および無料船員職業紹介事業者)の紹介により、継続して雇用される労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給する制度になります。対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ、当該雇用期間が継続して2年以上であることが必要になります。

2.生涯現役コース
65歳以上の方の雇入れに対する助成金になります。紹介を受けた日に雇用保険被保険者でない者(失業等の状態にある者)で、雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが雇入れ時点で確実であると認められることが必要です。仕組みは特定就職困難コースと同じです。

※65歳以上の労働者が雇用保険の加入要件を満たせば、高年齢被保険者として雇用保険への加入が義務づけられています。65歳以上の労働者が雇用保険に加入するためには、以下の要件が必要です。雇用保険料は一般の被保険者と変わりません。

(1)週所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上の雇用見込みがあること

受給額

・本助成金は、支給対象期間(雇用して6カ月)ごとに2〜6回に分けて支給され、労働局またはハローワークで支給申請を行います。支給対象期間の末日の翌日から2カ月以内に申請しますが、1回目の支給申請が行われていない場合でも、2回目以降の支給申請は可能です。

・支給対象期間ごとの支給額は、支給対象期間に対象労働者が労働した分として支払われた賃金額を上限とします。
・対象労働者の実労働時間が著しく短い場合には、支給額が減額されます。また、対象労働者が支給対象期間の途中で離職した場合には本助成金は支給されません。
・雇入れ事業主が、対象労働者について最低賃金法第7条の最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、支給対象期間について対象労働者に対して支払った賃金に次の助成率を乗じた額(表の支給対象期間ごとの支給額を上限とする)となります。

  大企業 中小事業主
対象労働者が重度障害者等以外の者 1/4 1/3
対象労働者が重度障害者等 1/3 1/2
受給のポイント

1.特定就職困難者コース
・本助成金は、事業主が次の(1)の対象労働者を(2)の条件により雇い入れた場合に受給することができます。

(1)対象労働者
・本助成金における「対象労働者」は、次の(a)または(b)に該当する求職者(雇入れ日現在において満65歳未満の者に限る)です。
(a)重度障害者等以外の者
・次の(イ)〜(力)のいずれかに該当する者(次の(b)に該当する者を除く)であって、以下(2)(a)の紹介を受けた日に雇用保険被保険者でない者(失業等の状態にある者)

(イ)60歳以上の者
(ロ)身体障害者
(ハ)知的障害者
(二)母子家庭の母等
(ホ)父子家庭の父(児童扶養手当を受けている者に限る)
(へ)中国残留邦人等永住帰国者
(ト)北朝鮮帰国被害者等
(チ)認定駐留軍関係離職者(45歳以上の者に限る)
(リ)沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
(ヌ)漁業離職者求職手帳所持者(「国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法」によるもの)(45歳以上の者に限る)
(ル)手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上の者に限る)
(ヲ)一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
(ワ)認定港湾運送事業離職者(45歳以上の者に限る)
(カ)アイヌの人々(北海道に居住している者で、45歳以上の者であり、かつ、ハローワークまたは地方運輸局の紹介による場合に限る)

(b)重度障害者等
・次の(イ)〜(ホ)のいずれかに該当する者。短時間労働者以外の労働者として雇い入れる場合には、以下(2)(a)の紹介を受けた日に雇用保険被保険者(在職者)であっても差し支えありません。

(イ)重度身体障害者
(ロ)身体障害者のうち45歳以上の者
(ハ)重度知的障害者
(二)知的障害者のうち45歳以上の者
(ホ)精神障害者

(ニ)母子家庭の母については、やや詳しい定義があり、広範囲に対象者になり得ます。母子及び父子並びに寡婦福祉法に規定する配偶者のない女子であって、以下の者を扶養しているものです。

(イ)20歳未満の子
(ロ)精神若しくは身体の障害により長期にわたって労働の能力を失っている配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
(ハ)一定の障害の状態にある子

(2)雇入れの条件
・対象労働者を次の(a)(b)の条件によって雇い入れること。
(a)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。具体的には次の機関が該当します。

(イ)公共職業安定所(ハローワーク)
(ロ)地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
(ハ)適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者(※)

(※)厚生労働大臣の許可を受けた有料・無料職業紹介事業者、届出を行った無料職業紹介事業者、または無料船員職業紹介事業者(船員として雇い入れる場合)のうち、本助成金に係る取扱いを行うにあたって、厚生労働省職業安定局長の定める項目のいずれにも同意する旨の届出を労働局長に提出し、雇用関係助成金に係る取扱いを行う旨を示す標識の交付を受け、これを事業所内に掲げる職業紹介事業者です。

(b)継続して雇用する雇用保険一般被保険者として雇い入れ、本助成金の支給終了後も引き続き2年以上雇用することが確実であると認められること。
➡対象者は 無期雇用であるか、または、契約更新回数に制限がなく、希望すれば全員契約更新が可能である場合等、無期雇用と同様と判断される有期雇用の場合に限ります。次のいずれかに該当する場合は支給対象となりません。

(イ)対象労働者と当該対象労働者を雇い入れる事業主(以下「雇入れ事業主」という) との間で、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等による紹介を受ける前から雇用の内定(予約)があった場合
(ロ)対象労働者が、その雇入れ日の前日から過去3年間に、雇用関係、出向、派遣、請負、アルバイト、事前研修により、雇入れ事業主の事業所で就労したことがある場合
(ハ)対象労働者が、その雇入れ日の前日から過去3年間に、雇入れ事業主の事業所で職場適応訓練(短期の職場適応訓練を除く)を受けたことがある場合
(ニ)対象労働者が、その雇入れ日の前日から過去1年間に、雇入れ事業主と資本・資金・人事・取引等の面で密接な関係にある事業主に雇用されていたことがある場合
(ホ)対象労働者が、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等による紹介の時点における条件とは異なる条件で雇い入れられた場合で、当該対象労働者に対し労働条件に関する不利益または違法行為があり、かつ当該対象労働者から求人条件が異なることについての申出があった場合
(へ)対象労働者に対して支払われるべき支給対象期中の賃金が、支払期日を超えて支給申請を行うまでに支払われていない場合
(ト)その他以下の場合
・代表者または取締役の三親等内の親族の雇入れ
・雇入れ前の3か月を超える実習(雇入れ日前3年)
・関連会社等の3か月を超える実習(雇入れ日前1年)
※対象労働者の雇入れ日から最後の支給対象期間に係る支給決定までの間に、当該対象労働者を事業主都合により解雇(勧奨退職等を含む)した場合は、当該支給申請については不支給となります

(c)解雇・離職について
・対象労働者の雇入れ日から、最後の支給対象期間に係る支給決定までの間に、当該対象労働者を事業主都合により解雇(勧奨退職等を含む)した場合は、以後3年間は、当該事業所に対する助成金を支給しないこととされています。解雇とは事業主の勧奨等による任意退職等も含み、具体的には雇用保険被保険者資格喪失届の喪失原因が「3」となる離職をいいます。また、支給対象期間の途中で対象労働者が離職した場合は、その支給対象期間(6カ月)分の助成金は原則支給しないことになります。この取扱いは特定求職者雇用開発助成金の以下のコースで適用になります。

(イ)特定就職困難者コース
(ロ)生涯現役コース
(ハ)被災者雇用開発コース
(ニ)発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
(ホ)就職氷河期世代安定雇用実現コース
(ヘ)生活保護受給者等雇用開発コース

2.生涯現役コース
・本助成金は、事業主が次の(1)の対象労働者を(2)の条件により雇い入れた場合に受給することができます。

(1)対象労働者
・本助成金における「対象労働者」は、次の(a)(b)に該当する求職者です。

(a)雇入れ日現在において満65歳以上の者であること
(b)紹介を受けた日に、雇用保険被保険者でない者(失業等の状態にある者)

(2)雇入れの条件
・対象労働者を次の(a)(b)の条件によって雇い入れること

(a)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等(※)の紹介により雇い入れること
(b)雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが確実であると認められること

(※)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等は、具体的には次の機関が該当します。

(イ)公共職業安定所(ハローワーク)
(ロ)地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
(ハ)適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者

※支給対象とならない場合については、特定就職困難者コースと共通になります。

受給できる事業主

1.本助成金を受給する事業主は、各雇用関係助成金に共通の要件等のうち、特に次の点に留意する必要があります。

「対象となる措置」の各要件を満たして雇い入れた対象労働者(以下「支給対象者」という)の出勤状況および支払状況等を明らかにする書類(労働者名簿、賃金台帳、 出勤簿等)を整備・保管し、労働局等から提出を求められた場合にそれに応じること。

2.次のいずれかに該当する事業主は支給対象となりません。

(1)支給対象者の雇入れの日の前日から起算して6か月前の日から1年間を経過する日までの間に、雇入れ事業主がその雇用する雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く。以下同様)を事業主都合によって解雇(勧奨退職等を含む)したことがある場合
(2)支給対象者の雇入れの日の前日から起算して6か月前の日から1年間を経過する日までの間に、雇入れ事業主がその雇用する雇用保険被保険者を、特定受給資格者となる離職理由により、当該雇入れ日における雇用保険被保険者数の6%を超えて、かつ4人以上離職させていた場合
特定受給資格者とは、雇用保険の離職票上の離職区分コードの1Aまたは3Aに該当する離職理由(事業主都合解雇、勧奨退職のほか、事業縮小や賃金大幅低下等による正当理由自己都合離職を含む)による離職者をいいます。
受給手続き

・申請手続きのながれは以下の通りになります。また、特定求職者雇用開発助成金の各種支給申請書のダウンロードは厚生労働省ホームページよりご利用ください。
➡リンク:特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)支給申請書ダウンロード
➡リンク:特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)支給申請書ダウンロード

1.提出書類について

(1)支給対象期間(6か月ごと)の末日の翌日から起算して2カ月以内に出します。提出する書類は以下の通りです。
※今回は特定就職困難者コースの支給申請について記載しております。他のコースについては書類が異なるのでご注意ください。

(a)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)第1期支給申請書
(b)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)第2・3・4・5・6期支給申請書
(c)支払方法・受取人住所届
(d)対象労働者であることを証明する書類(住民票、運転免許証等の写し)
(e)雇用契約書または雇入れ通知書
(f)出勤簿またはタイムカード(写し)
(g)対象労働者雇用状況等申立書(特定就職困難者コース)
(h)勤務実態等申立書
(i)支給要件確認申立書

(2)必要に応じて、以下の書類も提出が必要になります。

(a)母子家庭の母等の申立書
(b)特定求職者雇用開発助成金離職割合除外申立書(就労継続支援A型事業)
(c)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)離職割合除外申立書①(雇い入れ1年後)
(d)特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)離職割合除外申立書②(助成期間1年後)
(e)職業紹介証明書

(3)支給申請時に退職している場合

(a)退職届(写し)
(b)労働者名簿(退職日が記載された労働者名簿)

支給申請期間は、各支給対象期間の末日の翌日から2カ月以内です。第1回目の支給申請がなされていない場合でも、第2回目以降の支給申請は可能になります(ただし、第1回目分は支給されません)。

支給対象期間は、起算日から6カ月間ごとに区切った期間になります。起算日は、賃金締切日が定められていない場合は雇入れ日、賃金締切日が定められている場合は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日(ただし、賃金締切日に雇い入れられた場合は雇入れ日の翌日、賃金締切日の翌日に雇い入れられた場合は雇入れ日)となります。

担当当局

・担当当局は都道府県労働局ハローワークになります。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

・定年引上げ等は、優秀な人材を延長して雇用できるなど事業主にもメリットがあります。高年齢者雇用管理に関する措置の実施を効果的に行ううえで活用できるのが65歳超雇用推進助成金になります。
・本助成金の受給に際しては、高年齢雇用安定法に違反していないことの事前確認や、社会保険労務士等の専門家に経費を支払うことが支給要件となっているため、本助成金を検討する際は社会保険労務士等の専門家に相談することが必要になります。

制度の概要

65歳超雇用推進助成金は、65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用環境の整備、 高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成される雇用関係助成金で、次の3つのコースで構成されています。

1.65歳超継続雇用促進コース
2.高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
3.高年齢者無期雇用転換コース

➡今回は1.65歳超継続雇用促進コースについて解説します。

1.65歳超継続雇用促進コース
・本助成金は、将来的に継続雇用年齢や定年年齢の引上げを進めていくための助成金になります。65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主に対して、当該措置の内容に応じ助成します。

受給額

65歳超継続雇用促進コースでは、 「対象被保険者数」および「定年等を引き上げる年数」に応じて、以下の額が支給されます。ただし、支給は1企業1回に限られます。

受給のポイント

1.就業規則等により、次の(1)〜(3)のいずれかに該当する新しい制度を実施し、労働基準監督署へ就業規則を届出ることが必要になります。

(1)旧定年年齢(※1)を上回る65歳以上への定年引上げ
(2)定年の定めの廃止
(3)旧定年年齢および継続雇用年齢(※2)を上回る希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導人

(※1)就業規則等で定められた定年年齢のうち、平成28年10月19日以降、最も高い年齢をいいます。
(※2)就業規則等で定められていた定年年齢または希望者全員を対象とした継続雇用年齢のうち、平成28年10月19日以降、最も高い年齢をいいます。

【就業規則の改定例】
(現在の規定(例))第●●条 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日以後の最初の賃金締切日をもって 退職とする。ただし、本人が希望した場合65歳まで継続雇用する。

(1)旧定年年齢を上回る65歳以上への定年の引上げ
第●●条 従業員の定年は満65歳とし、定年に達した日以後の最初の賃金締切日をもって退職とする。

(2)定年の定めの廃止
第●●条 従業員の定年の定めはなしとする。

(3)旧定年年齢および継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
第●●条 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日以後の最初の賃金締切日をもって退職とする。ただし、本人が希望した場合は、66歳まで継続雇用する。

2.上記1.の制度を規定した際に経費を要したこと
・経費については次の(1)から(5)までのいずれにも該当するものに限ります。

(1)定年の引上げ等の制度を規定した際に要した経費で、以下のいずれかの経費であり、提出された書類により当該要件に該当することが確認できること(平成28年10月19日以降に契約、履行、支払等を行った経費であること)

(a)就業規則の作成、相談または指導を社会保険労務土等へ委託した場合の委託費
(b)労働協約により定年の引上げ、定年の定めの廃止、継続雇用制度の導入を締結するためのコンサルタントとの相談に要した費用
(2)支給申請日までに経費の支払いが完了したものであり、書類により支払いの事実が確認できること
(3)就業規則等の改正、届出等に係る事業主の従業員等の人件費、交通費、消耗品費、 会議費、その他事業主が社内で負担することが適当と判断される費用でないこと(申請事業主が社会保険労務士事務所等の専門知識を有する事務所であって、自ら実施することが可能な取組みを外部へ委託した際の費用についても対象とはなりません)
(4)助成金を申請する事業主と次の者との間の取引に要した経費でないこと

(a)当該事業主が個人の場合
 (イ)当該事業主の配偶者
 (ロ)当該事業主の1親等以内の親族
 (ハ)当該事業主の従業員
 (ニ)次の者が役員である法人
  (ⅰ)当該事業主本人
  (Ⅱ)当該事業主の配偶者
  (Ⅲ)当該事業主の1親等以内の親族
  (Ⅳ)当該事業主の従業員

(b)当該事業主が法人の場合
 (イ)当該法人の役員
 (ロ)当該法人の役員の配偶者
 (ハ)当該法人の役員の1親等以内の親族
 (ニ)当該法人の従業員
 (ホ)次の者が役員である法人
  (ⅰ)当該法人の役員
  (Ⅱ)当該法人の役員の配偶者
  (Ⅲ)当該法人の役員の1親等以内の親族
  (Ⅳ)当該法人の従業員
(5)実際の支払いを行わず帳簿上の処理により経理処理をしたものでないこと

3.高年齢者雇用管理に関する措置を実施すること

(1)高年齢者雇用推進者を選任すること
高年齢者雇用推進者とは、高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当しているものとして、必要な知識および経験を有している者の中から事業主が選任する者をいいます。事業主が高年齢雇用推進者になることも可能です。

(2)高年齢雇用管理に関する措置a〜gまでの1つ以上を支給申請日前日までに実施すること

(3)措置の実施方法
・措置の実施にあたっては、「単発による実施」または「就業規則等による実施」のいずれかによります。実施方法や措置の適用範囲については次のとおりになります。

受給できる事業主

1.受給できる事業主は、次の(1)から(10)のいずれにも該当する事業主です。

(1)雇用保険適用事業所であること
(2)審査に必要な書類等を整備・保管していること
(3)実地調査に協力する等、審査に協力する事業主であること
(4)労働協約または就業規則(以下「就業規則等」)を書面により定めていること
(a)常時雇用する従業員が10名以上の事業所においては、就業規則を労働基準監督署へ届出ていること
※改正後の就業規則は10人以下の事業所でも労働基準監督署へ届出が必要
(5)就業規則等により、次の(a)から(c)までのいずれかに該当する新しい制度を実施した事業主であること
(a)旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ
(b)定年の定めの廃止
(c)旧定年年齢および継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
(6)上記(5)に定める制度を規定した際に、経費を要した事業主であること
(7)上記(5)に定める制度の実施日(※1)から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第8条または第9条第1項の規定に違反していないこと(※2)
(※1)「実施日」とは就業規則等の施行日をいいます。
(8)支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇用保険被保険者(※1)が1人以上いること
(※1)短期雇用特例被保険者および、日雇労働被保険者を除き、期間の定めのない労働契約を締結する定年前の労働者または定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者(改正前の就業規則等における定年前の労働者または定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者であり、かつ支給申請日の前日において定年前の労働者または定年後の継続雇用者であることが提出された書類により確認できる者)
(9)高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること
(10)申請期間内に申請を行う事業主であること

(※2)「高年齢者雇用安定法」第8条または第9条第1項の規定に違反していないこととは?
➡65歳超雇用推進助成金を申請するためには、以下の(イ)と(ロ)を満たすことが必要になります。

(イ)事業主がその雇用する労働者の定年を定める場合には60歳を下回ることができない(高年齢者雇用安定法8条)
(ロ)65歳未満の定年を定めている事業主に対しては65歳までの高年齢者の雇用確保のために次のいずれかの措置を講じなければならない(高年齢者雇用安定法9条1項)
(Ⅰ)定年年齢の引上げ
(Ⅱ)継続雇用制度の導入
(Ⅲ)定年の廃止
受給手続き

1.支給申請書に以下の必要書類を添えて、定年引上げ等の制度実施日の翌日から起算して2カ月以内に、事業主の主たる雇用保険適用事業所の所在する都道府県の支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)に提出します。

・申請手続きのながれは以下の通りになります。また、65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)の支給申請書ダウンロードは、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページよりご利用ください。
➡リンク:65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)支給申請書ダウンロード

(1)支給申請書(継続様式第2号)(下記6種類)3部(原本1部、写2部)
(a)65歳超雇用推進助成金支給申請書 継続様式第2号(1)
(b)継続様式第2号(2)総括表
(c)継続様式第2号(3)個票
(d)継続様式第2号(4)高年齢者の雇用管理に関する措置内容
(e)継続様式第2号別紙1 定年の定め等確認・申立書
(f)継続様式第2号別紙2 支給申請額算定表
(2)登記事項証明書2部(写)
※3か月以内発行の登記事項証明書
※法人格がない団体の場合は定款、個人事業主の場合は所得税申告書(写)または開業届(写)
(3)就業規則等(嘱託、パート規定、賃金規定等の付属する規定を含む)2部(写)

(a)定年の引上げ等の制度の実施前(改正前)における確認できる就業規則等
(イ)労働協約(定めている場合)
(ロ)就業規則(常時10人以上の事業場は労働基準監督署に届出済の就業規則)
※定年の引上げ等の制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの期間における、定年および継続雇用制度が確認できる就業規則等

(b)定年の引上げ等の制度の実施後(改正後)における確認できる就業規則等
(イ)労働協約(定めている場合)
(ロ)労働基準監督署へ届出済の就業規則
(4)平成28年10月19日以降最高の定年年齢等が確認できる労働協約、労働基準監督署に届け出た就業規則(該当する場合のみ提出)2部(写)
※継続様式第2号(1)に記載した平成28年10月19日以降最高の定年年齢等を規定した労働協約または就業規則が、上記(3)で提出したものに含まれない場合は提出する必要があります。
(5)旧就業規則に関する申立書(補助様式1)(該当する場合のみ提出)3部(原本1部、写2部)
※労働者の数が常時10人未満の事業場において、上記(3)の旧就業規則(改定前)を労働基準監督署に届け出ていない場合は、従業員全員の署名または記名押印のうえ提出します。
(6)雇用保険適用事業所設置届事業主控または雇用保険事業主事業所各種変更届事業主控2部(写)
※最新のものを提出します。
※複数の雇用保険適用事業所を有する場合は、すべての適用事業所について提出します。
(7)雇用保険適用事業所等一覧表(補助様式2)(該当する場合のみ提出)3部(原本1部、写2部)
※複数の雇用保険適用事業所または労働保険番号を有する場合に提出します。
(8)対象被保険者の雇用保険被保険者資格取得等確認通知書等2部(写)
(9)対象被保険者の雇用契約書または労働条件通知書等(該当する場合のみ提出)2部 (写)
※継続様式第2(3)の対象被保険者が、定年後の継続雇用者である場合は、支給申請日の前日から起算して1年分の対象被保険者の雇用契約書または労働条件通知書等、労働条件が確認できる書類(写)を提出します。
(10)対象被保険者の賃金台帳・出勤簿2部(写)
・対象被保険者について、以下の(a)および(b)の書類を提出します。
(a)賃金台帳(最新1カ月分)
(b)出勤簿((a)の賃金台帳の算定期間分および算定期間から支給申請日の前日までの分)
(11)労働者名簿・賃金台帳(該当する場合のみ提出)1部(写)
※対象被保険者の雇用保険被保険者資格取得日が、支給申請日の前日から起算して1年未満の日である場合は「支給申請日の前日から起算して1年前の日」から「雇用保険被保険者資格取得日」までの期間の労働者名簿および賃金台帳の書類を提出します。
(12)経費の支払いを確認できる書類2部(写)
・以下の(a)から(c)までの書類を提出します。

(a)契約確認書類
※契約内容について、対象経費に該当する部分がわかるようにマーカー(印)をつけて提出します。契約内容等から明らかに対象経費に該当しない場合は支給対象となりません。

(b)支払確認書類
※支払方法、 金額、支払完了日、支払先、支払が完了した事実が確認できる次の書類
(イ)現金の場合:領収書、現金出納帳
(ロ)銀行振込の場合:銀行振込受領書、金融機関の通帳記入部分(または入出金明細)
(ハ)現金振込の場合:振込明細、現金出納帳
(ニ)手形・小切手の場合:領収書、当座勘定照合表、半券
(ホ)インターネットバンキングの場合:入出金明細(予約画面ではなく振込手続き完了後のもの)

(c)履行確認書類(該当するもののみ提出)
※納品物がある場合:納品物(就業規則、賃金規程等)
(13)預金通帳等、助成金の振込口座の確認ができる書類2部(写)
※事業所等名義の振込先口座(主に事業の用に供する口座)が確認できるものを提出します。
(14)支給要件確認申立書(65歳超雇用推進助成金)(共通要領様式第1号)3部(原本1部、写2部)
(15)高年齢者雇用管理に関する措置を確認する書類2部
※継続様式第2号(4)に記載した措置内容が確認できる就業規則・社内規定・社内通知文書・助成金支給決定通知書の写し、機械設備の写真等を提出します。
(16)その他記載事項を確認する書類2部
※その他記載事項を確認するため、必要に応じて書類の提出または提示を求められる場合があります。
(17)委任状(原本)(該当する場合のみ提出)2部
※代理人による申請を行う事業主は、委任状を提出します。
(18)提出書類チェックリスト2部(原本1部、写1部)
※申請を行おうとする事業主は、上記(1)から(17)の内容に準じて番号順に揃えたうえで、 提出書類チェックリストの提出書類欄に必要事項を記入し、事業主欄にレ点でチェックを入れたうえで提出します。
担当当局

・担当当局は都道府県の支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)になります。

外国人労働者のための助成金

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

・本助成金は、外国人労働者に長く働いてもらいたい事業所向けの助成金です。本助成金の受給に関しては、いかにして日本の制度を外国人労働者に理解してもらうか、その上で外国人労働者の就労定着に繋げることができるかどうかという点が重要になります。

・日本の制度を外国人労働者に理解してもらうための「ツール」としては、翻訳装置に通訳、規程の多言語化、仕事のマニュアル化どが挙げられますが、それによってもたらされる外国人労働者の就労定着こそが企業にとっての一番のメリットになります。受給に際して、比較的長い期間を要する助成金になりまして、1年半ほど期間を要します。その間しっかりと腰を据えて外国人労働者の就労定着を図ることが重要です。

制度の概要

・日本の労働法制や雇用慣行などの知識不足や、言葉の違いなどから労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい外国人労働者に対し、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して、その経費の一部を助成する制度になります。

受給額
  支給額(上限額)
生産性要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2
(支給上限額:57万円
生産性要件を満たしている場合 支給対象経費の2/3
(支給上限額:72万円

1.支給対象となる経費
・計画期間内に、事業主から外部機関等に対して支払いが完了した以下の経費が対象になります。

(1)通訳費(外部機関等に委託をするものに限る)
(2)翻訳機器導入費(事業主が購入する、雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入に限り10万円を上限とする)
(3)翻訳料(外部機関等に委託をするものに限り、社内マニュアル・標識類等を多言語で整備するのに要する経費を含む)
(4)弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限る)
(5)社内標識類の設置・改修費(外部機関等に委託をする多言語の標識類に限る)
受給のポイント

1.対象となる外国人労働者

(1)外国人雇用状況届出の対象となる者であること
(a)日本の国籍を有しない方で、在留資格「外交」「公用」以外の方が届出の対象となります。「留学」や「家族滞在」などの在留資格の外国人が、資格外活動許可を受けて就労する場合は、在留カードや旅券(パスポート)または資格外活動許可書などにより、資格外活動許可を受けていることを確認する必要があります。
特別永住者の方は、特別の法的地位が与えられており、本邦における活動に制限がありません。外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認・届出の必要はありません。したがって本助成金の対象外となります。
(2)その他
(a)事業主に直接雇用される者であって、当該事業主と労働契約を締結していること。
(b)雇用保険の被保険者であること。
(c)社会保険の適用事業所に雇用されている場合は社会保険の被保険者であること。

2.外国人労働者に対する就労環境整備措置

(1)(2)必須(3)〜(5)いずれかを選択する必要があります。

(1)雇用労務責任者の選任
・雇用労務責任者を事業所ごとに選任し、当該雇用労務責任者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示すること等により、その雇用するすべての外国人労働者に周知し面談を行います。
【重要】外国人と意思疎通ができることが重要になります。そのための通訳、翻訳機械などを導入する必要がある場合があリます。また、すべての外国人労働者と3カ月間ごとに1回以上の面談(テレビ電話等を含む)を行い、その記録も残します。また書面の配布(外国人労働者が理解できる言語の書面)も必要になります。
(2)就業規則等の社内規程の多言語化
・多言語化された就業規則等の社内規程が完成した(外部機関等に多言語化を委託した場合は、多言語化された就業規則等の社内規程が納品された)後、すべての外国人労働者に対し周知します。日本人も含めて常時10人以上の労働者を使用する事業主においては、管轄する労働基準監督署等に届出を行います。日本人を含めて常時10人未満の労働者を使用する事業主においては、労働基準監督署等に届出する就業規則または労働者全員に周知されたことが確認できる書類を作成します。
※就業規則の範囲
・原則として、労働条件に関することで全社員に適用となるものです。原則、就業規則上の必要記載事項に関わる別規程もすべて就業規則の一部とされます。例えば、 賃金規程・退職金規程・人事評価規程・育児介護休業規程等が代表的なものになります。
(a)出張旅費規程:通達でも明記されていますので、就業規則となります。
(b)ビジネスマナー:社員教育の一環ということで、内部通達としてのものであり、 就業規則の範囲には含まれません。
(c)ソーシャルメディアガイドライン:ガイドラインということであれば、ビジネスマナー等と同様の取り扱いになりますが、機密情報保護規程として懲戒規定などと関連しているのであれば就業規則の範囲に含まれます。
(d)社内クラブ規程:就業規則の範囲には含まれません。
(e)役員旅費規程:兼務役員がいる場合以外、就業規則の範囲には含まれません。
(3)苦情・相談体制の整備
労働協約または就業規則を変更することで、苦情・相談体制を新たに定め、すべての外国人労働者に苦情・相談体制の内容(利用方法等)を周知します。また、外国人労働者の母国語または当該外国人労働者が使用するその他の言語により苦情または相談に応じるものであることが求められます。
※具体例:事業所内に相談窓口を設置、外部機関等の通訳が同席しての個別面談、外部機関等への委託による苦情・相談に関する専用の電話やメールアドレスの開設等。
(4)一時帰国のための休暇制度
労働協約または就業規則を変更することで、一時帰国のための休暇制度を新たに定め、外国人労働者が当該就労環境整備計画に基づく連続する5日間以上の有給休暇を実際に取得することを可能にする制度を設定します。
(5)社内マニュアル・標識類等の多言語化
・多言語化された社内マニュアル・標識類等が完成した(外部機関等に多言語化を委託した場合は、多言語化された社内マニュアル・標識類等が納品された)後、すべての外国人労働者に対し周知します。就業規則等の社内規程に含まれない、外国人労働者に適用される安全衛生、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、福利厚生等に関するマニュアル(教材)・標識類その他の文書(動画を含む)等であり、恒常的・継続的に労働者に掲示されるものをいいます。

3.離職率要件

・離職率要件として、以下(1)〜(3)の要件を満たす必要があります。

(1)計画期間終了から1年経過するまでの期間の外国人労働者の離職率が10%以下であること。
(2)外国人労働者が2人以上10人以下の場合は、離職者が1人以下であること。
(3)計画前1年間と比べて、計画期間の終了から1年経過するまでの期間における日本人労働者(雇用保険被保険者)の離職率が上昇していないこと。
受給できる事業主

1.以下のすべてに該当する事業主に対して支給されます。

(1)雇川保険の適用事業主であること。
(2)外国人雇用状況届出を適正に届け出ている事業主であること。
(3)就労環境整備計画に基づき、就労環境整備措置を新たに導入し、導入した就労環境整備措置を対象事業所における外国人労働者に対して実施した事業主であること。
(4)過去に外国人労働者就労環境整備助成コースを受給している事業主が、就労環境整備計画を提出する場合、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過している事業主であること。
(5)就労環境整備計画期間の初日の前日から起算して6カ月前の日から支給申請日までの期間に、雇用保険法第23条第1項に規定する「特定受給資格者」となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aとされる離職理由により離職した者として受給資格の決定がなされたものの数を、就労環境整備計画の提出日における雇用保険被保険者数で除して得た割合が6%を超える事業主でないこと。なお、当該期間に特定受給資格者として受給資格の決定を受けた者の数が3人以下であればこの限りではありません。
(6)就労環境整備計画の初日の前日から起算して6カ月前の日から就労環境整備計画期間の末日までの期間について、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと。
「解雇等」とは、労働者の責めに帰すべき理由による解雇、その他の解雇、退職勧奨等を加えたもので、雇用保険被保険者資格喪失の喪失原因が「3」と判断されるものです。天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能になったことによる解雇は除きます。
(7)計画期間の終了から1年経過するまでの期間の外国人労働者離職率が10%以下となっている事業主であること。ただし、外国人労働者数が2人以上10人以下の事業所の場合は、1年経過後の外国人離職者数が1人以下の場合を除きます。
(8)計画前1年間と比べて、計画期間の終了から1年経過するまでの期間の日本人労働者の雇用保険一般被保険者の離職率が上昇していない事業主であること。
(9)社会保険の加入要件を満たす場合、事業所が社会保険の適用事業所であること、および当該事業所の労働者が社会保険の被保険者であること。
受給手続き

・申請手続きのながれは以下の通りになります。また、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の支給申請書ダウンロードは、厚生労働省ホームページよりご利用ください。
➡リンク:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給申請書ダウンロード

1.就労環境整備計画の作成・提出

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)就労環境整備計画(変更)書(様式第a-1号)に必要事項を記載し、以下の書類をすべて添付のうえ、管轄の都道府県労働局に提出します。なお、計画期間は3か月以上1年以内になります。

(a)導入する「雇用労務責任者の選任」および「就業規則等の多言語化」の概要票(様式第a-1号別紙1)
(b)導入する就労環境整備措置「苦情・相談体制の整備」、「一時帰国のための休暇制度」 および「社内マニュアル・標識類等の多言語化」の概要票(様式第a-1号別紙2)
(c)事業所における外国人労働者名簿(様式第a-1号別紙3)
(d)事業所確認票(様式第a-2号)
(e)多言語化するすべての就業規則等の社内規程(労働条件通知書または雇用契約書については、対象となる外国人労働者1名分を提出)
(f)就労環境整備措置を新たに導入するにあたり、変更する予定の労働協約または就業規則の案
※就労環境整備措置として「苦情・相談体制の整備」または「一時帰国のための休暇制度」を導入した場合
(g)導入する就労環境整備計画に関わる外部機関等が作成した見積書(写)
※費用の合計額のほか、内訳が明確に記載されているもの2社分。ただし、見積書の提出が1社となる場合は、2社分の見積書の提出が困難な理由を記載した任意の申立書を提出
(h)外部機関等が作成した見積書が適正なものであることを証明する書類(価格表、カタログ等2社分)
(i)人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)「見積書」算定書(様式第a-1号別紙4)
(j)多言語化する社内マニュアル・標識類等(就労環境整備措置として「社内マニュアル・標識類等の多言語化」を導入した場合)
※標識類の多言語化の場合は、掲示等されている実物を撮影した写真、仕様書等を添付
(k)すべての事業所における計画前1年間の雇用保険一般被保険者である日本人労働者の離職理由等がわかる書類(離職証明書(写)等)
(l)事業所が社会保険の適用要件を満たす場合、社会保険適用事業所であることがわかる書類(社会保険料納入証明書(写)、社会保険料納入確認書(写)等)
(m)事業所の労働者が社会保険の加入要件を満たす場合、社会保険の被保険者であることが確認できる書類(賃金台帳(写)、社会保険料の支払いが確認できる書類等)
(n)その他管轄都道府県労働局が必要と認める書類

2.就労環境整備措置の導入・実施

計画期間3か月〜1年の間に、「受給のポイント」必須メニューの(1)(2)を導入・実施するとともに、選択メニュー(3)〜(5)のいずれかを導入・実施します。

3.支給申請

(1)人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給申請書(様式第a-6号)の提出

算定期間(計画期間終了後1年)が終了してから2カ月以内に必要事項を記載し、以下の書類をすべて添付のうえ管轄の都道府県労働局に提出します。

(a)事業所確認票(様式第a-2号)
(b)事業所における外国人労働者名簿(様式第a-1号別紙3)
(c)事業所における計画期間の末日の翌日から起算して1年間の雇用保険一般被保険者である外国人および日本人労働者の離職理由等がわかる書類(離職証明書(写)等)
(d)導入した「雇用労務責任者の選任」および「就業規則等の社内規程の多言語化」の概要票(様式第a-6号別紙1)
(e)導入した「苦情・相談体制の整備」、「一時帰国のための休暇制度」および「社内マニュアル・標識等の多言語化」の概要票(様式第a-6号別紙2)
(f)外国人労働者の労働条件通知書または雇用契約書
(g)外国人労働者の出勤簿等出勤状況が確認できる書類
※就労環境整備措置の導入日の1か月前から、計画期間の末日の翌日から起算して1年間のすべての月分
(h)雇用労務責任者による面談結果一覧表(様式第a-6号別紙3)
(i)関係行政機関等の案内書面
※雇用労務責任者が外国人労働者との面談において外国人労働者に配布したもの
(j)多言語化したすべての就業規則等の社内規程
「受給のポイント」選択メニュー(3)苦情・相談体制の整備 または(4)一時帰国のための休暇制度を就労環境整備措置として導入した場合の労働協約または就業規則については、当該変更内容を反映したものに限る
(k)多言語化する前のすべての就業規則等の社内規程
※就労環境整備計画の添付書類として提出した就業規則等の社内規程に変更があった場合に限る
(l)外部機関等に支払った経費を証明する書類(領収書(写)、契約書(写)、納品書(写)等)
※就労環境整備措置の導入・実施に要した費用の合計額の他、内訳が明確に記載されているもの
(m)人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)「支払額」算定表(様式第a-1号別紙4)
(n)導入した就労環境整備措置を実施したことが確認できる次のいずれかの書類

(イ)苦情・相談体制の整備を実施した場合
(ⅰ)変更した日本語の労働協約または就業規則
※就業規則は労働基準監督署の受理印があるもの。ただし、常時10人未満の労働者を使用する事業主に限り、従業員全員に周知されたことが確認できる書面。なお、苦情・相談体制の導入後に労働協約または就業規則を変更している場合は支給申請時点での最新の労働協約または就業規則も併せて提出。

(ロ)一時帰国のための休暇制度を設けた場合
(ⅰ)外国人労働者が帰国したことを証明する書類(航空券の半券(写)等)
(Ⅱ)外国人労働者の賃金台帳等賃金の支払い状況が確認できる書類
※一時帰国のための休暇が有給休暇であったことを確認できる月の分
(Ⅲ)変更した日本語の労働協約または就業規則
※就業規則は労働基準監督署の受理印があるもの。ただし、常時10人未満の労働者を使用する事業主に限り、従業員全員に周知されたことが確認できる書類の添付でも可。苦情・相談体制の導入後に労働協約または就業規則を変更している場合は支給申請時点での最新の労働協約または就業規則も併せて提出。

(ハ)社内マニュアル・標識類等の多言語化を実施した場合
(ⅰ)多言語化したすべての社内マニュアル等(写)
※事業所内の標識類の多言語化の場合は、掲示等されている実物を撮影した写真
(o)支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
(p)事業所が社会保険の要件を満たす場合、社会保険適用事業所であることがわかる書類 (社会保険料納入証明書(写)、社会保険料納入確認書(写)等)
(q)事業所の労働者が社会保険の加入要件を満たす場合、社会保険の被保険者であることがわかる書類(賃金台帳(写)等、社会保険料の支払いが確認できる書類等)
(r)生産性要件を満たす場合、「生産性要件算定シート(共通要領様式第2号)と算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳等)
(s)その他管轄都道府県労働局が必要と認める書類
担当当局

・担当当局は都道府県労働局になります。ただし、都道府県によって申請場所が異なるため、申請の際には注意が必要になります。

総括

・少子高齢化社会となり、一般的な定年年齢といわれる65歳を過ぎても元気で活躍される方々は今後もますます増えていくことは間違いありません。今回ご紹介した助成金を活用することで、経験が豊富で能力の高い高年齢者の方々を企業の戦力として採用、または継続雇用することは、企業の成長に繋がる施策の一つではないでしょうか。

・また、外国人労働者に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響(入国制限やインバウンド需要の消滅等)により、その増加率は鈍化していますが、日本で働く外国人労働者数は年々増加しています。少子高齢化や労働力人口の減少により、慢性的な人手不足解消のため、外国人労働者の積極的な受け入れを検討する企業はますます増えていくことと思われます。今回ご紹介した人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者の就労定着を目指すうえで、非常に有益な助成金制度になります。

・当事務所では、ご高齢者や外国人の方々を積極的に雇用される企業へのサポートを通して、企業やその従業員の方々の成長に少しでも役に立てるサービスを提供していきたいと考えております。今回ご紹介した助成金の申請に関しまして、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。

次回のお知らせ

少子化が進む中、厚生労働省では、従業員が育児休業、育児目的休暇を取得しやすい環境を企業が整備できるよう、助成金を設けています。次回は、この両立支援等助成金を中心に、育児・女性・介護関連の助成金について詳しく解説していきたいと思います。

お気軽にお問い合わせください。
TEL:045-262-0214
受付時間:9:00-18:00(土曜・日曜・祝日除く)