『暑くない?』、『寒くない?』、あなたの職場は快適ですか?~事務所衛生基準規則について~

この季節になると、「エアコンが効かず暑くて困る!」、「エアコンが効きすぎて逆に寒い!」といったお声を耳にすることがあります。健全な環境で、安全に仕事をするための職場環境づくりのため、社内で基準規則等を作成する際、何を指標にすればよいのでしょうか?

職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律として、『労働安全衛生法』という法律があります。さらにこの労働安全衛生法の規定に基づき、『事務所衛生基準規則(事務所則)』が定められています。今回はこの事務所衛生基準規則について詳しく見ていきましょう。

事務所衛生基準規則の概要

事務所衛生基準規則は、労働安全衛生法の規定に基づく規則で、5章からなるとても短い厚生労働省令です。事務所の適切な労働環境を規定することで、快適な労働環境を実現するとともに、従業員の安全と健康を守るための規則になります。事務所を設立するにあたっては、この規則を順守した設計でなければいけません。規則に反する場合には、罰則(※)が科される可能性もあります。

➡(※)罰則に関しては、労働安全衛生法に基づいていることから、それと同じ6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑が適用されます。

事務所衛生基準規則における事務所は、パソコン業務や電話対応といった事務作業を行う一般的な事務所のことであり、工場や飲食店等の店舗は含まれません。そのため、工場や飲食店等の場合は、通常の労働安全衛生法に沿った設計を行うことになります。

【事務所衛生基準規則と建築物衛生法(ビル管理法)との関係】
・オフィス環境の規制は、労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)建築物衛生法(ビル管理法)により定められています。建築物衛生法(ビル管理法)は、延べ床面積3,000㎡以上の大型のビル(特定建築物)が対象で、3,000㎡未満の事務所は、事務所衛生基準規則のみが適用されることになります。
➡事務所衛生基準規則は労働者が事務作業をする部屋、建築物衛生法(ビル管理法)は多くの人が利用する大きな規模の建物に適用されるというイメージになります。

  特定建築物(学校8,000㎡以上 /その他3,000㎡以上) 特定建築物以外の建築物
事務所のない建物 ビル管法のみが適用される 規制なし
事務所のある建物 事務所衛生基準規則及び建築物衛生法が共に適用される 事務所衛生基準規則のみが適用される

(1)事務所衛生基準規則の各章のポイント

【第1章】総則 ➡事務所衛生基準規則が適用される建築物について規定されています。
【第2章】事務室の環境管理 ➡気積・換気温度・空気調和設備などの空気環境のほか、照明と騒音伝播の防止等の環境管理、作業環境測定等について規定されています。
【第3章】清潔 ➡給水と排水、清掃等の実施、労働者の清潔保持義務等が規定されています。
【第4章】休養 ➡休憩の設備等、従業員の休養に関して規定されています。
【第5章】救急用具 ➡負傷者の手当てに必要な救急用具について規定されています

事務所衛生基準規則は、事務所の労働環境を最適にしてくれる規定です。適切に遵守しなければ罰則が科されてしまう場合がある一方で、しっかり守ることで労働しやすい環境を実現することができ、業務の効率・生産性を高めることも可能になります。事務所衛生基準規則の各章のポイントをさらに詳しく確認されたい場合は、こちらのページをご参照ください。

今すぐできる!事務所則チェック項目

事務作業を行う部屋が、極端に暑かったり寒かったりすると、非常に不快で、従業員の方々にとっても快適な環境とは言えません。当然仕事の効率も悪くなり、体調を崩してしまう恐れもあります。そういった作業環境を改善するために、すぐにチェックできる項目をいくつか挙げてみます。

事務所内の室温

事務所衛生基準規則では、空気調和設備を設けている場合は、室温が17度以上28度以下、湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるようにする努力義務を定めています。また、室温が10度以下の場合は、暖房等の温度調節が義務化されています。
➡この暖房等の温度調整の義務違反に関しては、罰則規定が設けられており、処罰される場合は、法人と代表者が6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

この罰則に関しては、金額の問題ではなく、法的な処罰を受けることで、コンプライアンス意識の低い企業であると認識されてしまい、企業として罰則以上の損失を被ることになります。

『休養室』の設置

『休養室』とは、会社で体調が悪くなった際、従業員が使用することができる施設になります。事務所衛生基準規則21条では、「事業者は常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。」と規定しています。

事務所衛生基準規則において、『休養室』『休憩室』の定義は異なります。『休憩室』は、その名のとおり、労働者が休憩するための施設です。『休養室』とは異なり、ベッドや布団を置く必要はなく、テーブルや椅子などがあれば十分です。事務所衛生基準規則19条で「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。」 と規定されており、『休憩室』の設置については努力義務となっています。

快適な職場環境づくりのために

先日お客様の事務所訪問時、従業員の方から「社長がエアコン嫌いで極力エアコンを使用しないため、事務所内が暑くて少し困ってます…。」といったお話を伺いました。事務所内の室温に関しては、暑いと感じる方もいれば、寒いと感じる方もいて、なかなか調整が難しいと思います。

➡後日、社長とお話をする機会があり、事務所衛生基準規則に規定されている室温の基準について説明させていただいたところ、
「そうなんですか。それではその規則の基準に即した内容で、事務所内の室温設定をすることにします。」とご理解をいただきました。従業員の皆さまからも、「非常に快適になりました!」と喜ばれました。

事務所衛生基準規則に規定される内容は、従業員の方々が安全で快適に仕事ができる環境づくりのため、『当たり前』のことを実践すれば当然にクリアできるものばかりですが、事務所衛生基準規則の内容と、会社の体制や実際の運用が、規則と相違していないかどうかをチェックしてみることも大切なのではないでしょうか。

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