産休・育休取得時の社会保険手続きについて

産休(産前産後休業)や育休(育児休業)に関連する社会保険手続きはややこしい部分がたくさんあります。「休んでいる間はお給料が出ないけど、その間、お給料の補てんを受けられるのかしら?」、「休んでいる間も、社会保険料は今まで通り納めなければならないのかしら?」等々、産休・育休取得予定の社員からだけではなく、産休・育休対応が初めてとなる会社のご担当者様からもご相談を受ける機会が多くあります。今回は、産休・育休取得時の社会保険手続きに関して詳しく解説していきます。
目次
産休や育休に関する社会保険制度の概要

産休(産前産後休業)や育休(育児休業)期間中で、社員が全く勤務しない場合、会社は社員に対して給与を支払う必要はありません。その間、給与の補てんとして、健康保険や雇用保険に加入し、一定の条件を満たす社員に対しては、それらの保険から給付が受けられます。また、社会保険に加入する社員は、産休・育休期間中も社会保険に加入し続けることになりますが、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料について、申出を行うことで支払いが免除(会社負担分を含め)されます。ちなみに、雇用保険料は給与が支給されない月については発生しません。
➡産休や育休に関する社会保険制度を利用するためには細かな要件がありますので、概要や提出先、提出期日、注意点などに関して確認していきましょう。
産前産後休業期間中の社会保険料免除

産前産後休業期間中、ほとんどの会社は給与を支給しません(無給)。ただし、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の負担が大きなものとなるため、社員から産前産前休業取得の申出があった場合、会社が管轄の年金事務所に申出をすることにより、社員負担分・会社負担分ともに保険料が免除されます。
| ① 届出様式 | 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届(➡届出様式こちら) |
| ② 提出期日 | 産前産後休業期間中または産前産後休業終了日の翌日から1か月以内 |
| ③ 提出先 | 管轄の年金事務所 |
| ④ 添付書類 | なし |
実務上のポイント
(1)免除される期間
➡出産のために会社を休んでいる場合に社会保険料が免除される制度になりますので、産前休業期間中に有給を取得している場合でも対象になります。また、産休期間も給与を支給するとしている会社の場合も対象になります。
➡社会保険料(月額保険料)が免除される期間は、産前休業開始月から産前・産後休業終了予定日の翌日が属する月の前月(終了日が月末の場合には終了月)までになります。賞与に対する社会保険料については、月末に産前産後休業を取得している月に支給される賞与については免除されます。また、免除期間も被保険者としての資格は継続しますので、健康保険による保険診療を受診することができ、将来受給できる年金額も、厚生年金保険を納付したものとして計算されます。
(2)経営者や役員の場合
➡経営者や会社役員が出産のため休む場合で、社員と同様に産前産後休業を取得する場合には社会保険料の免除の申出ができます。ただし、経営者や会社役員は(育児介護休業法上の)育児休業は取得できませんので、育児休業期間中の社会保険料免除を受けることはできません。
出産手当金(産休中の収入の補てん)

産前産後休業で会社をお休みし、その期間に給与が支給されないとき、出産日(実際の出産が出産予定日より後の場合には出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以後56日まで、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
| ① 申請様式 | 健康保険 出産手当金支給申請書(➡申請様式はこちら) |
| ② 提出期日 | 支給対象となる日の翌日から2年を経過すると申請できなくなります。 ※出産前に申請することも可能で、産前産後で分割して申請することも可能になります。 |
| ③ 提出先 | 協会けんぽ(または健康保険組合) |
| ④ 添付書類 | 原則はなし |
実務上のポイント
(1)申請のタイミング
➡出産手当金は産前産後で分割して申請可能で、産前分は休業開始後、産後分は休業終了後に申請できますので、出産手当金の支給を早く受けたい場合には、分割して申請するのが実務上一般的です。ただし、分割して申請する場合には、申請の都度会社の証明を受けなければなりません。
(2)支給対象となる日
➡出産手当金は、産前産後期間中で勤務する義務のある日(所定労働日)に対してだけではなく、休日を含む暦日に対して支給されます。また、出産予定日と出産日は一致しないことがほとんどですが、出産日が出産予定日より後になった場合、出産予定日から実際の出産日までの期間も出産手当金の支給対象に含まれます。
(3)出産手当金の額
➡出産手当金の1日あたりの額は、社員の標準報酬月額(※)に基づき決まります。具体的には、[支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額]÷30日×2/3になります。
(※)標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料や給付金の計算基準となる金額です。実際の給与額を基に、法律で定められた一定の範囲(等級)に当てはめて決定されます。
育児休業期間中の社会保険料免除

育児休業期間中、ほとんどの会社は給与を支給しません(無給)。ただし、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の負担が大きなものとなるため、社員から育児休業取得の申出があった場合、会社が管轄の年金事務所に申出をすることにより、社員負担分・会社負担分ともに保険料が免除されます。
| ① 届出様式 | 健康保険・厚生年金保険 育児休業取得者申出書(新規・延長)/終了届(➡届出様式はこちら) |
| ② 提出期日 | 育児休業期間中または育児休業終了日の翌日から1か月以内 |
| ③ 提出先 | 管轄の年金事務所 |
| ④ 添付書類 | なし |
実務上のポイント
(1)免除される期間
➡育児休業期間中の社会保険料の免除は、月額保険料と賞与に対する保険料とで取り扱いが違います。また、免除期間も被保険者としての資格は継続しますので、健康保険による保険診療を受診することができ、将来受給できる年金額も、厚生年金保険を納付したものとして計算されます。
| 免除される期間 | |
| ① 月額保険料 | ➡育児休業開始月から育児休業終了日の翌日が属する月の前月(育児休業終了日が月末の場合は育児休業終了月)まで。 |
| ② 賞与保険料 | ➡1か月を超える育児休業をした場合で、育児休業期間に月末が含まれる月に支給された賞与の社会保険料が免除されます。 (注)賞与に対する社会保険料免除に関して、産前産後休業期間中とは取り扱いが少し違いますので注意が必要です。 |
(2)経営者や役員の場合
➡産前産後休業期間中の社会保険料免除は、会社経営者や役員も対象になりますが、会社経営者や役員は、(育児介護休業法上の)育児休業等を取得することができないため、たとえ休業をしていたとしても、社会保険料免除の対象とはなりません。
育児休業給付金(育休中の収入の補てん)

子供が1歳になるまでの育児休業を取得し、その期間に給与が支給されないときは雇用保険から育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金を申請する際には2つのステップがあります。① まず、育児休業を開始した際に、該当社員が育児休業給付金の支給を受ける資格があるかどうかを確認し、育児休業給付金の額を決定するための基準となる「賃金日額」を登録します。② その後、原則として2か月に1回、会社が育児休業給付金の申請を行います。
※出生時育児休業給付金、出生後休業支援給付金については、別の機会に詳しく解説させていただきますので、今回のブログでは詳しい説明を割愛させていただきます。
| ① 申請様式 | 受給資格確認 賃金登録 |
① 雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書 ② 育児休業給付受給資格確認票(初回)育児休業給付金支給申請書 |
| (2回目以降) 支給申請 |
育児休業給付金支給申請書 | |
| ② 提出期日 | 受給資格確認 賃金登録 |
初回の支給申請を行う日 |
| 初回の支給申請 | 育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日 | |
| (2回目以降) 支給申請 |
ハローワークに指定される期間 | |
| ③ 提出先 | 受給資格確認 賃金登録 |
管轄のハローワーク |
| 支給申請 | ||
| ④ 添付書類 | 受給資格確認 賃金登録 |
① 母子手帳、母健カード等の育児を行っている事実が分かる書類 ② 賃金台帳、出勤簿(タイムカード) ③ 育児休業申出書(育児休業取得者が男性の場合) |
| (2回目以降) 支給申請 |
賃金台帳、出勤簿(タイムカード) |
実務上のポイント
(1)申請のタイミング
➡育児休業給付金の支給を受けられるかどうか(受給資格)の確認と、給与額(賃金日額)を登録する手続きですが、育児休業開始日以降であれば手続き可能になります。受給資格確認と給与額(賃金日額)の登録は初回の支給申請と同時に行いますが、初回の支給申請の提出期日は、育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日になります。

➡2回目以降の支給申請ですが、育児休業開始日から1か月ごとに区切った期間(支給単位期間)に応じて申請手続きを行いますが、支給単位期間を過ぎてしまった場合でも、過ぎてしまった支給単位期間の申請手続きをまとめて行うこともできます。
(2)育児休業給付金の額
➡育児休業給付金の1日あたりの支給額ですが、原則として、育児休業等を取得する前6か月間の給与の合計額を180で割った額(賃金日額)の67%(育児休業を開始してから6か月を経過した後は50%)になります。
育休復帰時の社会保険料の月額変更

育児休業の終了後の職場復帰ですが、出産前のように残業ができなくなったり、育児短時間勤務制度(※)を利用することで、給与の額が育児休業に入る前よりも少なくなることがあります。このような場合に、月額保険料の変更を行うことができます。
(※)育児短時間勤務制度とは、3歳未満の子どもを養育する社員が、希望に応じて1日の所定労働時間を短縮して働けるよう会社に義務付けられた制度になります。
| ① 届出様式 | 健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届(➡届出様式はこちら) |
| ② 提出期日 | 速やかに |
| ③ 提出先 | 管轄の年金事務所 |
| ④ 添付書類 | なし |
実務上のポイント
(1)届出義務
➡育児休業から復帰したときの社会保険料の月額変更ですが、この届出は社員の申出に基づき行うことになっておりますので、会社が必ず行わなければならない届出ではありません。社員が希望しない場合、届出を行わなくても問題ありません。
(2)出産手当金や傷病手当金との関係
➡育児休業から復帰したときの社会保険料の月額変更を行うことで、健康保険、厚生年金保険料の負担は少なくなりますが、届出後に健康保険の傷病手当金や出産手当金を受給する場合、給付額も少なくなる可能性があります。そのため、育児休業復帰後、すぐに次のお子様を対象に出産手当金の受給を予定している場合などには、あえて育児休業から復帰したときの社会保険料の月額変更を行わない場合もあります。
年金額計算の特例(養育特例)

3歳未満の子どもを養育している期間中、残業ができなくなったり、育児時短勤務などで給与の額が少なくなり、それにともない、社会保険料の月額変更を行った場合でも、将来受け取る年金額が下がらないよう、社会保険料は少なくなった給与を基礎に計算することもできますが、将来受け取る年金額の計算の際には、育児休業に入る前の給与を基礎に計算することができます。これを養育特例といいます。
| ① 届出様式 | 厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(➡届出様式はこちら) |
| ② 届出期日 | 社員から申出を受けたとき |
| ③ 提出先 | 管轄の年金事務所 |
| ④ 添付書類 | ① 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書 ※会社が社員と子どもの続柄を確認したときは添付不要となります。 ② 住民票の写しの原本 ※社員と子どものマイナンバーを申出書に記載する場合は添付不要になります。 |
実務上のポイント
(1)対象者
➡養育特例の申出の要件は「3歳未満の子どもを養育していること」になりますので、申出の対象者は育児休業や育児短時間勤務制度を利用した社員に限定されません。また、性別を問わず届出ができますので、男性社員であっても要件に該当すれば届出が可能になります。
(2)届出義務
➡養育特例の届出ですが、この届出は社員の申出に基づき行うことになっておりますので、会社が必ず行わなければならない届出ではありません。ただし、社員の将来の年金額に影響が出るものであるため、対象となる社員に対しては、届出を推奨するべきです。

産前産後休業や育児休業に関連する社会保険手続きはたくさんあり、仕組みも複雑でややこしいところが多いため、これから出産・育児に臨む社員からだけではなく、実際に手続きを行う会社のご担当者様からも様々なお問い合わせをいただきます。実際に手続きの漏れやミスが生じた場合、産休・育休を取得する社員に対してだけではなく、会社に金銭的損失が発生する場合もあります。産前産後休業や育児休業に関連する社会保険手続きについてご不明な点があれば、ぜひ当事務所までお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください。
TEL:045-262-0214
受付時間:9:00-18:00(土曜・日曜・祝日除く)

